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2019.11.11

東京都 必見!「都立高 2020年度(平成31年度)入試問題分析」 その特徴と対策は?

【全体傾向】 内容・難易度とも大きな変化はない

これからの受験勉強を効率的に進めて行くためには、過去の入試問題の傾向を確実に把握しておく必要があります。
そこで今回は、31年度の都立高校入試(第一次募集・分割前期)の共通問題を振り返りながら、今後の対策を考えてみることにしましょう。
まず各教科の平均点を見ておきます。(カッコ内は30年度)

国語 71・0(65・9)
数学 62・3(66・5)
英語 54・4(68・0)
社会 52・7(61・5)
理科 67・1(61・5)

前年(30年度)と比べると、国語と理科は上がっていますが、他の3教科は下がっています。理科が過去5年間で最高であったのに対し、英語と社会は大きく下がり、過去5年間で最低でした。
平均点の変化は、出題分野や出題形式によって起こります。基礎的・基本的な問題を中心に出題するという方針に変わりはありません。
大問数・小問数など問題構成にも大きな変化はありません。

【国語】 作文は条件さえ満たせば高得点

大問1は漢字の「読み」、大問2は漢字の「書き」で、それぞれ5問ずつ。配点は計20点なので、ここは確実に点を積み上げておきたいところです。
大問3は小説(文学的文章)の読解です。
31年度の設問を見ると、「この表現から読み取れる馬淵の様子として最も適切なのは」、「このときの馬淵の気持ちに最も近いのは」のように、主人公の心の変化や、それによる態度や行動の変化に着目したものが中心となっています。これらに注意しながら問題文を読む練習をしておくといいでしょう。
大問4は論説文(説明的文章)の読解です。
やや難解な語句も含まれる文章ですが、それらに惑わされることなく、段落ごとに筆者の意見の大意を読み取るようにしましょう。
大問4の問5では、200字以内の作文が課せられています。配点は10です。部分正答も含む正答率は約80%なので、点数は取りやすいと言えるでしょう。「具体的な体験や見聞も含めて」書くようにという条件つきなので、そこをはずさないことがポイントです。
大問5は対談の形式をとっていますが、内容的には古典に関する出題です。古文では、「歴史的仮名遣い」に関する知識がよく試されています。

<>h3【数学】数学的な考え方や表現力も求められる

大問1は9問で構成されており、配点は計46点と全体の半分近くを占めています。
問6までは計算問題です。
問1 数の計算
問2 式の計算
問3 平方根を含む計算
問4 一次方程式
問5 連立方程式
問6 二次方程式
6問中3問は正答率が90%を超え、2問が85%を超えているので難しくはありません。正確性はもちろんですが、解くスピードも求められます。ここを短時間でクリアして、後半の問題に「ゆとり」を残したいところです。
大問2は、正方形や円を題材として数学的に考察して処理する能力や、推論の過程を文字で表現する能力をみる問題でした。小問2問中1問は、正答率10%以下のやや難しい問題でした。
大問3から大問5にもやや難しい問題が含まれています。
大問3 関数
大問4 平面図形
大問5 空間図形
各大問とも2~3の小問で構成されていますが、そのうち1問は、正答率が10%台かそれ以下だったので、高得点を目指すには、これらをどう克服するかがポイントとなりそうです。

【英語】読解力だけでなく表現力も問われる

大問1はリスニング問題です。配点は20点。
難しい表現や単語はほとんどありません。また、設問も「Which」「When」「What」「where」「How」などの形で聞かれるので、そこに注意して聞きとればいいでしょう。CDなどを使って練習しておくと効果があります。
大問2はやや短めの文章による総合問題で、図表・グラフ、イラスト・地図などが登場するのも特徴と言えるでしょう。配点が12点ある英作文は、部分正答も含めた正答率が57・6%と低いので、ここで点差が開く可能性があります。
最初から長い文章を書こうとせず、短めの文章を正確に書けるようにすることから始めるといいでしょう。
大問3、大問はともに長文読解問題ですが、大問3は対話文、大問4は物語文となっています。学校での英語の授業のように、一字一句丁寧に読もうとすると時間が足りなくなります。
対話文においては、対話の流れを、物語文においては、国語同様に、登場人物の心情や行動をつかむことを心がけましょう。
得点力のベースとなるのは語句や文法などの知識ですが、ふだん、あまり長文読解問題に取り組む機会がないと思いますので、休日などを使い、時間をかけて取り組んでみましょう。

【社会】地理・歴史は「世界」を理解する

地理・歴史・公民の3分野からまんべんなく出題されています。
問題の構成は次のとおりです。
大問1 3分野総合
大問2 地理(世界)
大問3 地理(日本)
大問4 歴史
大問5 公民
大問6 3分野総合
記号選択式問題がほとんどですが、記述問題への対応も忘れてはいけません。
大問4の問2は、江戸時代における海外との交流に関する問題でしたが、正答率8・4%と非常に低くなっています。また、大問6の問1・問2は世界の都市や出来事に関する問題でしたが、正答率はそれぞれ39・6%、37・9%と高くありません。世界の歴史や地理と、日本との関りについて知識を整理しておく必要がありそうです。
文章による記述問題は2問ありました。このうち大問5の問1は、三つ資料を参照しながら「1960年と1970年の国民生活の変化」について述べる問題でしたが、正答率(部分正答含む)は45・%とあまり高くありません。資料を正確に読み取る力と、そこから得られる結論を正しく表現する力が求められています。
記述問題の配点が特に高いというわけではありませんが、これらが合否を分ける可能性は高いのでしっかり練習しておきましょう。

【理科】実験・観察をもとに科学的に思考する力

社会同様、各分野からまんべんなく出題されています。
大問1と大問2は各分野からの小問で構成されています。配点は計11問で44点と全体の半分近くを占めています。半数は正答率が60%を超えるような比較的平易な問題なので、ここはとりこぼしを少なくしたいところです。
大問3以降は次のような構成になっています。
大問3 地学
大問4 生物
大問5 化学
大問6 物理
大問3「地学」の問3は、地震に関して震源からの距離を問う計算問題でしたが正答率17・2%と非常に低くなっています。これは全問中もっとも低い正答率です。
大問5「化学」の問2は銅の粉末の質量と酸素の質量との関係をグラフにかかせる問題でしたが、正答率(部分正答含む)72・4%と比較的よく出来ていました。
各分野とも、基礎的・基本的知識を問う問題はよく出来ていますが、それらを活用し科学的思考に基づいて考察するような問題になると正答率が一気に下がる傾向が見られます。

【まとめ】

早めの過去問研究で傾向をつかむ
問題内容や難易度は年度によって多少の変化はありますが、その変化は全体的に見ればわずかなものです。
繰り返し出題されている「定番問題」も数多く見られます。
こうしたことに早くから気づいておけば対策を講じることができます。また、自身の弱点を気づかせてくれます。
よく、過去問を最後の「力試し用」に取っておくという人がいますが、これはかなりの危険をはらんだ考え方だと言えるでしょう。
できるだけ早く過去問研究に取り組んでもらいたいと思います。

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