よみうり進学メディア

入試情報
2020.9.3

〈2021年度入試〉受験生の疑問に答えるQ&A「親の勧める高校と行きたい高校が違います。その高校に行くなら進学させないと言われました」ほか

Q1 中3の受験生です。私は塾に行っていないので問題集を買ってやっているのですが、自分に合っていない気がして何冊も買ってしまいます。そろそろ一つの問題集に絞って解いた方がよいでしょうか。

 

A1 最適な問題集は一人一人違います。先輩の体験記などに「これはおススメ」と書いてあったので買ってみたものの自分には合わなかったというのはよくあることです。ピッタリなものに巡り合うまでに少し遠回りしてしまうのは止むを得ないことです。

とは言え、本番まで半年を切っていますから、いつまでも問題集探しをしているわけにも行きません。今すぐ一冊に絞る必要はありませんが、すでに手元に何冊かあるなら、それを終わらせることを優先し、新たに買い足すのは一旦ストップしましょう。

手元にある問題集のうち、どれを優先するかは、現在のあなたの実力にもよりますが、何も見なくても半分程度は解けるといったあたりが、ちょうどいいと思います。手も足も出ない問題があまりにも多いものは、やる気が失われ継続できません。逆に、簡単に解けてしまう問題ばかりのものだと実力をつけるという目標が達成できません。そのあたりを考えながら、優先的に取り組む問題集を決め、それをまず終わらせましょう。

すべての受験生に欠かせない一冊は、公立過去問題集や私立の学校別過去問題集です。出題内容や出題形式、解答方式に慣れるため、必ずやっておかなければなりません。本番までに二度三度と繰り返しやってください。時期が遅くなると入手しにくくなる場合もありますから、今すぐやるかどうかは別として、これだけは早めに購入して手元に置いておいたほうがいいでしょう。

 

 Q2 勉強をやる気がおこりません。勉強を好きになる方法はありますか。

 A2 勉強ができるようになると勉強が好きになります。ですから勉強嫌いのあなたが勉強好きになる唯一の方法は、できる子になることです。

できる子になるには継続が必要です。勉強だけでなく、スポーツでも芸術でも何かの技術でも、できるようになるには継続しかありません。継続なしに瞬間的に出来てしまうことは、人生ではほとんど役に立たないことです。

継続のいいところは、続ければ続けるほど楽になることです。たとえば一日30分机に向かうことを1か月ほど続けてみてください。すると最初に感じた苦しさはなくなってきます。そうなったら、あと10分、15分と少しずつ時間を延ばします。

結果は必ず出ます。やり方は多少間違っていても、それなりに結果は出ます。もっと結果が欲しかったら、その段階で初めて「工夫」をします。「工夫」は結果を見て、そこから発見するものですから、最初から「工夫」するのは無理です。

できる子になるもう一つの方法は、得意なことだけやることです。苦手は後回しです。これと言って得意がなければ、やや得意でもいいです。出来もしないことを目標にせず、出来そうなことを目標にします。そうすれば目標はかなり高い確率で達成されます。これはつまり、成功の実感を味わうということです。

あなたはまだ成功の喜びを知りません。でも、一度経験するとクセになります。もっと上手くやりたいと思うようになります。それが好きになるというのは、そのような状態を言います。

 

Q3 親の勧める高校と行きたい高校が違います(その高校に行くなら進学させないと言われました)。志望校を変えるしかないのでしょうか。

 A3 言う通りしないと進学させない? お父さんかお母さんか分かりませんが、いきなり最終兵器を繰り出してきましたね。では、あなたも言ってやりましょう。「希望通りさせてくれないと老後の面倒はみてやらない」って。

というのはもちろん冗談です。ご両親がそこまで強く勧めるからには、よほどの理由があるのでしょう。そこ、じっくり聞いたことありますか。また、あなたは自分が行きたい高校について、その理由をちゃんと筋道立ててご両親に説明していますか。

私は高校の先生でしたが、生徒に対し「そこはやめておけ」と言ったことはあります。何度もあります。で、その場合、生徒が言ってきた学校自体に重大な問題点があるかというとそうでもなくて、むしろ問題なのはそこに行きたい理由なのです。

ですから、ご両親は学校自体よりも、あなたがそこに行きたい理由に何か不満があるのかもしれません。

あなたはご両親が勧める学校を見学しましたか。逆にご両親はあなたの行きたい学校の見学に付き合ってくれましたか。もしまだであれば、それを実現させてください。その程度の歩み寄りはできるでしょう。それをせずにお互いの主張をぶつけ合っても話は平行線のままだと思います。

受験生にとって先生や親は味方です。力になってくれる存在です。しかし今の状態は「仲間割れ」です。これでは敵を倒せません。一刻も早く、力を合わせて受験を乗り切れる体制を作ってもらいたいと思います。

 

Q4 中3です。今年の受験はどうなりますか。進路説明会や進学相談会などコロナの関係でほとんどなく、不安な状況がずっと続いています。大丈夫でしょうか。

A4 不安なのは、それだけ真剣に考えている証拠ですね。何もなくても受験には不安がつきまといますが、加えてコロナによる異例の事態ですから不安が増すのも無理はありません。

現段階では、入試制度や選抜方法、試験日程等に変更はないと考えておいていいでしょう。唯一例年と異なるのは出題範囲ですが、広くなるのではなく狭まる方向での変更ですから心配は要りません。

コロナの影響で大規模な進学イベントはことごとく中止または延期となりました。こうしたイベントは、単に高校情報を得るだけでなく、それらを通じて受験生としての自覚や意欲を高めて行く効果もあります。授業の遅れもさることながら、気持ちの切り替えが遅れているのが今年の受験生ではないでしょうか。

しかし、8月以降、説明会を実施する学校が増えてきました。オンライン型だけでなく、会場型・対面型、つまり通常スタイルの説明会も増えてきました。例年と異なるのは、参加人数を制限したり、事前登録制を採用したりという点です。9月から10月にかけてはさらに説明会が増えますから、早めに計画を立ててください。

一人で部屋にこもっているとどうしてもマイナス思考になりがちです。細心の注意を払いつつ、できるだけ説明会などに行ってみましょう。実際に学校を訪れ、高校の先生方のお話を聞き、集まった受験生の顔を見れば、受験に向かう気持ちも高まってくるでしょう。

 

Q5 将来の仕事、やりたいこと、夢などが決まっていません。そのため、行きたい高校もあやふやな状態です。将来のことを考えて高校は大学進学を考えて選んだ方が良いでしょうか。行事など楽しそうな学校を選びたいとも思っています。アドバイスお願いします。

A5 将来の仕事についてあれこれ考えるのはいいことですが、無理して今すぐ決めなくてもいいと思います。それと、夢は決めるものではありませんね。「あなたの夢は何ですか」などと聞かれることが多いので、いつでも必ず持つべきものと思いがちですが、「今のところ特にありません」という答えもありです。人の話を聞いたり、本を読んだり、いろいろな体験したりする中で、自然に生まれてくるものです。

大学進学を考えて高校を選ぶべきか、ということですが、もしあなたが難関大学への進学を強く望むなら、実績の出ていない高校より、すでに実績の出ている高校を選んだ方が希望は実現しやすいでしょう。学校としてノウハウの蓄積がありますし、同じ志を持った仲間が大勢集まるので、互いに切磋琢磨する中で自分の能力が引き出されます。ただ、高校はそれぞれ指導方針や指導方法が異なりますから、そこをしっかり見極めなければなりません。実績は重要ですが、それだけにとらわれ過ぎず、自分の性格なども考えて「ここなら頑張れそうだ」と思える高校を選んでください。

いろいろな行事があった方が高校生活は楽しいので、そこに目を向けるのは悪くないと思います。が、高校生活のメインはやはり勉強ですから、行事を最優先に考えるというわけにも行かないでしょう。たまにある行事がどんなに楽しくても、毎日の授業が苦痛だったら、全体として楽しい高校生活とはなりません。

 

Q6 保護者です。先日、公立高校の試験範囲について発表がありました。ただ私立高校については各学校の判断で範囲が決まるという話を聞き、どう対応すればいいのか困っています。

 A6 一部誤解があるようなので最初に確認しておきますが、中学校の授業では中3全範囲を学びます。入試出題範囲から除外されたからといって、学校の授業でやらないわけではありません。そのために夏休みを短縮し、土曜授業なども行い授業時間を確保しようとしているのです。また、塾では高校入学後のことも考え、入試に出ようが出まいが全範囲をしっかり教える方針のところが多いようです。

公立の出題除外範囲は都道府県により異なります。首都圏では、東京・埼玉ではが除外範囲がやや広く、神奈川・千葉ではやや狭いという状況になっています。私立入試は3教科型が多いので英数国3教科に限って言えば、どの都県も国語は中3の漢字が除かれる程度であり、出題範囲はこれまでとほとんど変わりません。数学は神奈川・千葉で標本調査が除かれ、東京・埼玉ではそれに加え三平方の定理なども除かれます。英語は千葉が除外範囲なし、神奈川は中3英単語のみ除外、東京・埼玉は関係代名詞の一部の用法などが除かれます。

私立は所在地の都県の公立の範囲に合わせる学校が多いと見られていますが、仮に除外範囲無しとなったとなった場合でも、公立との違いが顕著に現れそうなのは、三平方の定理(数学)と、関係代名詞の一部用法(英語)が出題されるかどうかです。

従来から難関私立ほど公立とは別の対策が必要でした。その点を考えれば今年だけ特に対策が難しいということにはならないと思います。

回答者:教育ジャーナリスト(元公立高校教諭) 梅野弘之