埼玉県教育局は、これまでに令和3年度公立高校の入試募集人員(6月)、選択問題実施校、7月に入試実施要項、学力検査出題の基本方針、出題の範囲のリーフレット、9月には各高校の選抜基準発表を発表した。 これにより、3年度入試の全容が出そろったことになる。
新型コロナ禍による中学校の休校や部活の大会等が中止になったことへの配慮(学力検査出題範囲の縮小等)がされる以外の前年との変化はない。
中学3年生は、9月末に、第一回目の進路希望調査が実施された。これは、全県の国・公・私立の中学で一人1校志望校を学校に提出するもので、10月29日にその結果が発表された。
いよいよ、志望校の決定の時期に差し掛かってきた。
志望校の決定は、12月の中旬が目安
埼玉県教育局は10月29日に「令和3年3月の中学校卒業予定者の進路希望調査10月1日付」を発表した(詳細はこちら)。
学校ごとの倍率の高低に驚いたり、安心したりしてはいないだろうか?
これは、9月末に中学校に提出した「進路調査票」を全県で集計したものだ。
前年の同時期と比較して、学校ごとに、希望者がどのくらいいるかという動向調査の資料となる。
この時期、まだ志望校が確定していない人も多いと思われるので、各校別の倍率などは参考程度にしておいてほしい。
今後、12月中旬にもう一度、調査がある。1月10日頃に発表されるこちらの数値は、調査書の評定が確定していることや、私立高校の個別相談がほぼ終了していることから、信頼度が高い。
例年、今の時期から、およそ一か月の間に志望校を確定する受験生が多いということでもある。
ただし、公立希望の場合、出願が2月となるため、冬休み期間中の成果を確認した上で、最終的な志望校の確定は、1月末というケースも多いようだ。
出題の基本方針は、出題範囲の変更でも変わらない
7月に「令和3年度公立高校入試における学力検査問題の出題の基本方針」が県から発表された。
1 中学校における平素の学習を重んじ、中学校学習指導要領(注)に基づいて出題する。
2 基礎的な知識及び技能をみる問題とともに、思考力、判断力、表現力等の能力をみる問題の出題に配慮する。
3 各教科の目標に照らして、受検者の学力を十分に把握できるように、出題の内容、出題数に配慮するとともに、記述による解答を求めるよう配慮する。
4 新型コロナウィルス感染症の緊急事態宣言に伴う、中学校の休校措置での、入試の出題範囲を配慮する。
となっており、学力検査の出題は、「中学校で学習した内容」とされる。
また、本誌9月号でも掲載した出題範囲への配慮にも注意が必要となる。
一般の学力検査問題と数学・英語に学校選択問題が用意されるが、3年度入試も、出題の基本方針は、前年から変わっていない。
注意することは、知識や技能を重視するとともに「思考力・判断力・表現力」をみる問題の出題がされるということだ。
つまり、読み取ること、聞き取ること、それを基に考えること、自分の言葉で書くことが求められていることになる。見方を変えれば、読み取る問題や記述解答の問題が増えたということになる。
2年度入試でも、一般問題では、139問の問題中記述問題が85問と59・0%を占め、作文や英作文、作図・証明などの部分点のある解答を含め、配点では全体の65・0%となっていた。
数学・英語の選択問題を含む5教科では、144問で記述問題が83問と59・7%となっていた。配点では全体の68・2%だった。
なお、県教育局の分析では、共通問題の記述形式の出題には、用語・単語、文章表現、作図の3種類あり85問中50問が用語・単語、33問が文章表現、数学と理科に作図が出題されていた。
選択問題でも、83問中42問が用語・単語、39問が文章表現となっており、文章題の攻略が得点のカギになっているようだ。
また、文章表現と作図は部分点を認める場合が多い。
これに対応するためには、勉強の仕方も、単に言葉や事象を覚えるのではなく、内容を理解し、自分の言葉で組み立てられるようにしておく必要があるだろう。出題の方針が変わらないため、過去の入試問題を解き、出題や解答方法などを知り、対策することが重要であり、その時期が来ているともいえる。
注 学習指導要領 全国の小学校・中学校・高等学校の学習の基準となる方針。
中学の公的テストや実力テストに全力を尽くせ
今春の全日制の入試では、出願1・12倍、志願確定1・12倍で推移した。実質倍率でも、166人の合格者の超過はあったが1・14倍となった。不合格者は受験生の12%、約5050人だった。
3年度入試では、学校選択問題採用校は、前年から春日部女子が抜け、川口市立が加わったが、21校が採用する。他に変更はない。
3年度入試に臨む中学3年生は、公立中学校で前年より約1,430人減少し、約57,980人、私立中学校で3,009人となっている。
私立の場合、ほとんどが内部進学するため、公立高校への受験生は、公立中学卒業生が中心となる。このため、公立高校の募集人員は840人減少した。
3年度入試の平均の倍率は、ほぼ変化がないと考えられる。
新型コロナウィルス感染症の影響で、県内だけではなく、東京都内などの大規模な入試相談会が軒並み中止となり、受験生の学校選択に影響が出ている。
会場模試も7月までは、中止となり、自宅制に切り替えられていた。
一方で、中学校では、実力テストや校長会テスト等での入試分析が進み、確実な進路指導が受けられるようになってきている。
中学校でのテストは、公立入試に準拠しているケースが多いようだ。全力で受験していって欲しい。
各高校の選抜基準は入試の大きなヒントになる
9月に「入試選抜の基準」が発表された。
公立の入試では、入試得点だけでなく、各学年の調査書の各教科の評定合計が、各校ごとに定めた一定の比率で得点化され、入試得点と併せて選抜に利用される。評定の学年ごとの比率や、入試得点との合算の仕方が明らかになっている。
各校の選抜は、入試得点と、調査書の各学年の評定の割合を掛け合わせた累計に加点要素を加えたもの(内申合計)、に一定の割合を掛けて加えたものを用いて行われる。
選抜基準を調べると、学力検査の得点を重視している学校と、各学年の評定を大切にしている学校があることが分かる。
この中では、ボーダラインともいえる第二次選抜で学力検査の得点を調査書の評定よりも重視する学校が多くなっていることに注目したい。3年度入試では、調査書の算定期間がコロナ禍の影響を受けているためか、学力重視の傾向が強いようだ。
また、3年次の部活動の実績は、大会等が中止となっているため使用しないことになっている。3年次までの部活所属や1・2年次の活動実績や英検・漢検等での加点内容をチェックしておきたい。志望する高校の選抜の基準を調べ、対策をとって欲しい。
(岩佐教育研究所 岩佐桂一)