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2025.9.30

特別寄稿「特色ある教育に魅力 私立校人気の背景」 大学通信情報編集部 松平信恭先生

特色ある教育に魅力 私立高人気の背景を解説

第一志望に私立高を選ぶ人が増えるなど、私立高人気の高まりが見られます。
私立高にはさまざまな魅力があります。人気の理由を探っていきましょう。

 

個性的な学校が数多く存在

私立高の一番の特徴は、すべての学校が確固たる建学の精神や教育理念を持ち、それらに基づく教育を実践している点にあります。校風がまったく同じ学校は一つとしてなく、各校が個性ある教育を行っています。私立高には教育活動でのより大きな裁量が認められており、どの学校でも同じ教育を目指す公立高とは対照的です。

私立高に多様なコース設定があるのはその一例です。授業科目や単位数の自由度が高い私立高は、特定の分野を重点的に学ぶカリキュラムを組むことが可能です。英語や国際教育に特化したグローバルコース、理数系科目重視の理数コース、スポーツや保育を重点的に学ぶコースなど、生徒の興味・関心や将来の進路希望に合わせたさまざまなコースが用意されています。
難関大進学を目指す特進コースや医学部を目指す医進コースなど、特定の大学への進学を目指すコースもあります。第二外国語や教養科目といった選択科目を用意する学校や、部活動に力を入れている学校もあります。
3年間の高校生活を思う存分に楽しみ頑張れる、自分に合った環境を選べるのは私立高の大きな魅力です。

 

手厚いサポートで難関大合格が増加

難関大への合格実績が伸びていることも人気の要因です。東大、京大、東北大などの難関国立大や、早慶上理(早稲田、慶應義塾、上智、東京理科)、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)など難関私立大の合格者が増加しています。

現役合格者が多いのも私立高の特徴で、それを支えるのが充実した学習指導や支援体制です。朝の0時限目や放課後の7時限目に行う補習授業や長期休暇中の集中講座を多くの私立高が実施。少人数制授業や習熟度別授業、生徒が主体的に学ぶアクティブ・ラーニングなどを取り入れることで、学習効果を高めている学校もあります。

英語4技能を重視した実践的な英語教育を強みとする学校もあります。海外語学研修やICT(情報通信技術)を積極的に活用した海外提携校との交流、各種英語検定試験の対策講座などの機会を用意。IB(国際バカロレア)資格を取得可能なプログラムにより、海外大学への進学を後押しする学校もあります。

併設の大学などに優先入学できる大学付属校を選べるのも、公立高にはない私立高の魅力です。近年は内部進学の権利を持った状態で他大学を受験可能な学校も増えています。優先入学には各校が条件を設けており、卒業すれば全員が進学できる学校から、ほとんどの人が他大学へ進学する学校まで実情はさまざまです。志望校選択の段階で確認しておきましょう。

 

学費負担は軽減

独自性や自由度の高い魅力ある教育を行っている私立高ですが、その分、学費については公立高よりも高く設定されています。
一方で近年は、国の就学支援金や地方自治体の独自補助といった高校生向けの学費支援制度が充実。実質的な負担は減少しています。
埼玉県は国の支援に独自補助を上乗せすることで、年収約720万円未満の世帯について私立高の授業料を実質無償化しているほか、世帯年収に応じた入学金や施設費等納付金の補助制度も用意しています(図)。
さらに2026年度からは国の支援の所得制限が撤廃され、全国授業料平均相当額となる45万7千円を上限に給付が行われる方針が示されています。
私立高は学費以外にかかる費用が学校ごとに異なる点に注意する必要はありますが、独自の奨学金制度を用意している学校もあり、少ない負担額で通学できる可能性があります。学費支援が拡充してきたことも私立高人気を支える一つの要因です。

 

個別相談には必ず参加しよう

私立高を志望する場合は、公立高とは異なる入試制度についても知っておきたいところです。埼玉県では2025年1月22日と23日に主要な私立高入試が行われ、それ以降は募集枠が減少していきます。2月下旬に実施される公立高入試よりも早く私立高入試は始まるのです。

私立高は入試制度の面でも多様性があり、埼玉では「単願」と「併願」を明確に区分した上で各校が独自入試を行っています。
「単願」とはその高校を第一志望とする人に向けた入試で、合格後すぐに入学手続きを行う必要があります。
「併願」は他の高校が第一志望の人も受験可能で、第一志望の合否を待って入学するかを決めることができます。

学力試験は多くの私立高が単願・併願ともに国語・数学・英語の3教科で行いますが、5教科型や1・2科目選択型を採用する場合もあります。
「一般」の他に「推薦」という区分もあり、推薦基準に該当する人は一般とは異なる審査(書類・面接・適正検査など)で合否判定を受けることも可能です。埼玉の私立高の多くは単願だけでなく併願でも推薦制度を用意しています。

出願の際は単願・併願ともに、中学の成績や模試の偏差値などの目安が設けられる場合がほとんどです。埼玉の受験生は例年9〜12月に学校説明会などと同時に実施される「個別相談」へ参加して入試傾向や合格可能性を高校の先生に直接相談する必要があります。9月に実施される外部模試の成績は、そのための大切な資料となります。必ず受験するようにしてください。

入試や経済的支援に関する制度は一昔前から様変わりしており、最新の情報を知らない保護者も多いです。私立・公立に関係なく自分が望む高校生活を実現できる学校へ進学できるように、受験生自身もよく調べた上で、家庭内で進学先について話す機会をつくってみましょう。

 

(㈱大学通信情報編集部  松平信恭先生)

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