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特選記事
2022.5.11

特別寄稿「志望校は広い視点で選ぼう!」 ㈱大学通信 伊沢秀先生

コロナ禍の影響が徐々に薄まる

新型コロナウイルスの感染拡大が続き、まだ収束の兆しは見えない状況です。しかし、コロナ禍の学校生活も3年目に入り、休校措置を取らずに、対面で授業が行わるようになってきました。クラブ部活動などの課外活動を含め、徐々に通常の学校生活に戻りつつあります。民間の資格試験なども開催されるようになりました。

もちろん、学校生活においてコロナ禍の不安が完全になくなることはありませんが、これは中学3年生は全員が同じ条件ですから、それほど焦る必要はありません。

今年は、学校が集まっての合同相談会や各学校別の説明会も、人数制限を設けるなど、感染防止対策に十分な注意をした上で、対面で実施されるようになっています。間違いのない学校選びのために積極的に活用したいものです。

多彩な教育を展開している私立高

コロナ禍にあっても、入試は行われます。入試を行わないと、高校は入学者を決められません。志望校選びは、今までと変わりません。

一般的に志望校を選ぶ時には、内申点と偏差値の重視になりがちです。しかし、志望する高校の魅力は、それだけではわかりません。自分の持っている成績だけで高校を選ぶのは、合格可能性の高い高校を選んでいることと同じです。つまり、「入れる高校」選びをしていることになります。

大切なのは、「入りたい高校」選びをすることです。志望校で3年間本当に過ごしたいと思える高校を選びたいものです。そのためには、もっと広い視点から探してみてはどうでしょうか。例えば男女別学、共学のどちらがいいのか、通学しやすいか、遠くても3年間通い続けられるのかどうかなどです。私立高なら校風や建学の精神にも注目しましょう。部活動や学校行事が盛んなのか、学習の支援体制はどうなのか、学校の勉強だけで志望校へ進学できるのか、図書館など施設・設備の充実にも気を配りたいところです。

それ以外でもグローバル教育にどう取り組んでいるのかも大切です。皆さんが大学に進学して就職する頃には、日本のグローバル化はさらに進んでいます。将来、就職して海外勤務になることは当たり前になり、ともに働く外国人の同僚も増えていきます。そんな時に海外の人と、どうコミュニケーションをとり、理解しあうのか、ということが重要になります。そのためにグローバル教育がどう行われているのかもチェックしましょう。

大学合格実績が伸びた理由は?

たくさんある学校選びの基準の中で、大切なのが大学合格実績です。今や大学進学率は54%を超えています。当然ながら、どこの大学に進学できるのかも重要です。

大学合格実績のこの10年を見ますと、埼玉の高校全体で確実に合格者は上がっています。2022年の最難関の「東京大+京都大」の合格者数は県全体で124人でした。東大合格者の埼玉県内トップは浦和で27人、栄東14人、大宮10人の順でした。

次に旧7帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)の合格者合計を2012年と2022年で比較してみましょう。埼玉の高校全体で388人から451人に伸びています。また、全国に50校ある国公立大の医学部合計は92人から117人に25人増でした。埼玉県内トップは浦和で25人、大宮16人、開智と栄東がともに11人の順でした。国公立大医学部は難関で、東大や京大の工学部系と同じほど難関なところが多くなっています。

私立大トップの早稲田大と慶應義塾大合計の合格者数を見ると、国公立高は1,002人で、私立高は927人。卒業生数は国公立高が私立高の約2倍ですから、私立高のほうが合格の割合が高いことが分かります。

なぜ、私立高はこれほど伸びたのでしょうか。何もせずに大学合格実績が伸びることはありません。私立高は努力を重ね、生徒の第一志望の大学合格を果たすための取り組みを、積極的に行ってきたからに他なりません。早朝0時間目の授業や、放課後の補習授業、夏期講習や冬期講習、勉強合宿などを行い、努力と工夫で生徒の学力向上に力を注いできました。最近ではグローバルコース、特別進学コース、国公立大コースなどコース制を取り入れている学校も多くなっています。授業でもアクティブラーニングを取り入れ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などを磨く最先端の教育を展開しています。

そうはいっても、私立高は勉強漬けではありません。今は勉強だけしていれば、学力が大きく向上することはないと言われています。部活動や学校行事、海外研修、フィールドワークなどに励むことで、学力も伸びていきます。

2021年から大学入試が変わった

21年から大学入試が変わり、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)が始まりました。今まで行われていた大学入試センター試験は廃止になりました。 国公立大入試では、共通テストの成績と大学の独自試験の合計点で合否が決まります。しかし、その改革の目玉だった民間英語試験の成績の活用が延期され、すべてマークシート方式だった国語と数学に、記述式の問題が出題されるのも見送りになりました。その結果、センター試験とは大きくは違いません。安心していいでしょう。

文部科学省は学力の3要素として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に多様な人々と協働して学ぶ態度」を挙げています。今まで、ともすれば「知識・技能」をきく問題が多かったのですが、共通テストでは「思考力・判断力・表現力」を問う出題が多くなります。

どのような問題が出題されようとも、基礎、基本は変わりません。基礎力をしっかりつけ、その上で、自ら考える問題が出題されます。私立高は多くのことを生徒に挑戦させることで、大学合格だけでなく、その先の社会で求められる社会人基礎力の育成を行っています。能力を伸ばすのに最適な高校はどこなのか。公立や私立の枠組みにとらわれることなく、志望校を選んでいきましょう。

埼玉県内私立高校からの大学合格者数10年前比較(※数字は大学通信調べ)

■グラフ1:国公立大医学部計/2012年38人→2022年45人
■グラフ2:GMARCH(学習院、明治、青山、立教、中央、法政)/
2012年3,943人→2022年5,076人

(㈱大学通信 情報調査部長 伊沢秀先生)

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