A1 最初から冷水を浴びせますが、「勉強の仕方がわかりません」と、「勉強していません」は同義です。あなたはまだ勉強を始めていませんね。実際に勉強している人は、「このやり方で間違っていないか」と具体的に聞いてくるものです。
ただし、質問してきたからには、「しなければならない」という自覚はあるのでしょう。そこに救いがあります。
あなたが小学校1年に入学して以来、今日まで、勉強の仕方についてはさんざん教わってきました。勉強の仕方を教えない先生はいません。それを思い出してください。
授業の予習をしていますか。授業中はノートを取っていますか。質問はしていますか。家で授業の復習をしていますか。宿題や課題をちゃんとやっていますか。テスト前はふだんの倍以上机に向かっていますか。
はい、ここまでで勉強の仕方の9割以上は説明しました。もしあなたが受験生だとしたら、これに過去問題集をやりなさいとか模擬試験を受けなさいというのが加わるくらいで、これが勉強の仕方のすべてです。
泳げない人がいたら、まずどんなフォームでもいいから50m泳げるようにしてあげるのが先決で、それが出来たらもっと速く泳げる方法や、もっと美しく泳げる方法を教えてあげるのが正しい指導法だと思います。だから、あなたの場合にはとりあえず水着に着替えてプールに飛び込んでもらおうかな。いきなりオリンピックでメダルを獲る方法はないかと聞かれても答えようがありませんね。
A2 勉強が出来ていませんの意味ですが、3年になってまだ授業が行われていないから、その部分の勉強が不安ということなのかな。だとしたら、それは全員同じ条件だし、これから徐々にばん回できるから心配は要りません。授業が遅れた分、入試の出題範囲が減らされる可能性もありますからね。
でも、勉強が出来ていませんの意味が、学校がないから勉強に身が入らないとか、何をやっていいか分からないということであれば、これは大いに心配です。
たしかに学校があったほうが勉強のペースは断然つかみやすいです。授業があって、その予習復習があって、宿題が出て、小テストや定期テストがあって、そういう流れにうまく乗って行けば自然と受験につながる勉強もできてしまいますからね。
ただ、受験でいい結果を出そうとしたら、学校の勉強だけではダメなんですよ。
一人一人志望校が違うでしょう。得意・不得意教科も人それぞれでしょう。もちろん今の実力にも差があるでしょう。だから、受験勉強というのは自分の計画にしたがって、自分一人でやらなければならない部分が非常に多いのです。
そう考えれば、授業が進まない今は、ある意味でチャンスだと思いますよ。1・2年の復習をやるチャンスです。
勉強が出来ない理由をすべて休校のせいにするのはやめましょう。「受験勉強=学校の授業+家庭学習」です。学校の授業が少ない分、自身の計画に基づいた家庭学習が増やしましょう。それが出来れば受験は大丈夫です。
A3 先生的視点で言うといい質問ですね。親として何とかしなければという思いが溢れているという意味でいい質問。
まず、スマホ、ゲーム、漫画、全部容認しましょう。子供に遊びは必要です。大人にも必要です。遊びと勉強、遊びと仕事は二択ではありません。どちらかを捨てるのではなく、どちらもたくさんやる人生の方が充実しているではないですか。
お子さんは、しっかり遊ぶことはできているようなので、それはそのままでいいです。しっかり勉強することの意味を教えてあげましょう。「お母さんは(お父さんは)、しっかり勉強しなかったから苦労している」みたいなのはダメですよ。それ全然、勉強する意味の説明になっていません。
子供たちは勉強は学校でするものだと思っています。自分はまだ子供だから勉強させられるんだと思っています。入試があるから勉強しなければならないのだと思っています。
でも、勉強ってそういうものですか。大人になっても社会人になっても勉強は必要です。人は皆、一生勉強です。
大人の勉強と子供の勉強の違いは、先生がいない、決まった教科書がない、時間割がない、テストや宿題がない、仕方ないから自学自習する、といったところでしょうか。
子供たちは、先生の言葉には従わなくても、先生の態度にはものすごく影響されるんです。子供たちは言葉を聞いているのではなく、態度を見ているのです。先生本気だぞ、先生真剣だぞ、そう感じたとき初めて話を聞こうかという気になるのです。
A4 高校に行くのは罰ゲームじゃないですから、自分にとって「楽しい学校」に行けばいいんじゃないですか。同じ漢字でも「楽な学校」ではちょっと困りますけど。
入試という関門があるので、楽しそうだから行きたいと思っても、必ずしもその学校に行けるわけではありません。であれば、一番目に行きたい学校がダメなら、二番目、それも無理なら三番目、というように、とにかく行きたい学校を目指せばいいと思います。
ところで、最初に「楽しい学校」と言いましたが、そういう学校は実はないんですね。その反対の「つまらない学校」というのもありません。「楽しい学校」と「つまらない学校」の区分けは、皆さんの心の中にあるのです。先輩から「楽しい学校だから来いよ」と言われても、それは個人の感想ですから、あなたが入って同じように思えるかどうかは分かりません。
私は仕事柄、たくさんの学校のホームページやパンフレットを見ます。そこで、その学校のイメージがだいたい出来上がるのですが、実際に訪問してみると、最初に抱いたイメージが覆されることがあります。想像より良い場合と想像より悪い場合の両方があります。こうした経験からも、志望校を決めるという作業において学校訪問は欠かせないと思います。
今年は各校の説明会開催が遅れています。ネットなどで気になる学校をチェックしておき、シーズンに入ったらどんどん行ってみましょう。行ってみないとなかなか決まりませんよ。
回答者:教育ジャーナリスト(元公立高校教諭) 梅野弘之