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東京 入試情報
2020.11.6

〈2021年度入試〉東京都 「 都立入試問題その特徴と対策は?2020年度(令和2年度)の問題を振り返る」

【全体傾向】
出題形式・難易度とも大きな変化はない

これからの受験勉強を効率的に進めて行くためには、過去の入試問題の傾向を確実に把握しておく必要があります。
そこで今回は、令和2年度の都立高校入試(第一次募集・分割前期)の共通問題を振り返りながら、今後の対策を考えてみることにしましょう。
まず各教科の平均点を見ておきます。(カッコ内は平成31年度)
国語 81・1(71・0)
数学 61・1(62・3)
英語 54・7(54・4)
社会 57・0(52・7)
理科 53・4(67・1)
前年(平成31年度)と比べると、国語・英語・社会が上がり、数学・理科が下がりました。特に目立つのは、国語が約10点上がったことと、理科が約14点下がったことです。
令和3年度入試では、各教科で出題範囲が縮小されますが、出題形式や難易度については大きな変化はないでしょう。
また、大問数・小問数など問題構成についても大きな変化はないと予想されます。

【国語】
大意を読み取る練習が欠かせない

難問は少なく受験者の半数以上(53%)が85点以上をとっています。
大問1は漢字の「読み」、大問2は漢字の「書き」で、それぞれ5問ずつ。配点は計20点です。ここは全問正解を狙いたいところです。なお、令和3年度入試では中3の教科書で学習する漢字は出題範囲から除外されます。
大問3は小説(文学的文章)の読解です。
令和2年度の設問を見ると、「この表現から読み取れる『サキ』の様子として最も適切なのは」、「このときの私の気持ちに最も近いのは」のように、登場人物の心の変化や、それによる態度や行動の変化に着目したものが中心となっています。これらに注意しながら問題文を読む練習をしておくといいでしょう。
大問4は論説文(説明的文章)の読解です。
やや難解な語句も含まれる文章ですが、それらに惑わされることなく、段落ごとに筆者の意見の大意を読み取るようにしましょう。
大問4の問5では、200字以内の作文が課せられています。配点は10点です。部分正答も含む正答率は75・6%なので、点数は取りやすいと言えるでしょう。「具体的な体験や見聞も含めて」書くようにという条件つきなので、そこをはずさないことがポイントです。
大問5は対談の形式をとっていますが、内容的には古典に関する出題です。古文では、「歴史的仮名遣い」に関する知識が繰り返し問われています。

【数学】
数学的表現を用いて説明する力が必要

大問1は9問で構成されており、配点は計46点と全体の半分近くを占めています。
問6までは計算問題です。
問1 数の計算
問2 式の計算
問3 平方根を含む計算
問4 一次方程式
問5 連立方程式
問6 二次方程式
6問中3問は正答率が90%を超え、3問が70%を超えているので平易な問題と言えます。問6は解の公式を用いて解きますが、根号を含む式の意味を理解していない人が多く、正答率は57・3%にとどまりました。
大問1では正確性と共に解くスピードが求められます。ここを短時間でクリアして、後半の問題に「ゆとり」を残したいところです。
大問2は、円柱の展開図を基にして円柱の体積や円柱の側面との関係について数学的に考察して処理する能力や、推論の過程を文字で表現する能力をみる問題でした。小問2問中1問は、正答率26・3%とやや難しい問題でした。
大問3から大問5にもやや難しい問題が含まれています。
大問3 関数
大問4 平面図形
大問5 空間図形
大問4の問2②は正答率6・6%、大問5の問2は正答率2・4%とかなり低くなっています。高得点を目指すには、これらをどう克服するかがポイントとなります。
なお、令和3年度入試では、三平方の定理と標本調査は出題範囲から除外されます。

【英語】
知識をベースに読解力と表現力を伸ばす

大問1はリスニング問題で、配点は20点です。
難しい表現や単語はほとんどありませんが、聞き取りが不十分だったためと思われる誤答が見られます。CDなどを使ってスピードに慣れる練習をしておく必要があるでしょう。
大問2はやや短めの文章による総合問題で、ウェブサイト・パンフレット・Eメールが資料として用いられています。配点が12点ある英作文は、部分正答も含めた正答率が46・6%と低いので、ここで点差が開く可能性があります。
最初から長い文章を書こうとせず、短めの文章を正確に書けるようにすることから始めるといいでしょう。
大問3、大問4はともに長文読解問題ですが、大問3は対話文、大問4は物語文となっています。学校での英語の授業のように、一字一句丁寧に読もうとすると時間が足りなくなります。
対話文においては、対話の流れを、物語文においては、国語同様に、登場人物の心情の変化をつかむことを心がけましょう。
得点力のベースとなるのは語句や文法などの知識ですが、ふだん、あまり長文読解問題に取り組む機会がないと思われるので、休日などを使い、時間をかけて取り組んでみましょう。
なお、令和3年度入試では、関係代名詞の一部用法が出題範囲から除外されます。

【社会】
地理・歴史は「世界」を背景に考える

地理・歴史・公民の3分野からまんべんなく出題されています。
問題の構成は次のとおりです。
大問1 3分野総合
大問2 地理(世界)
大問3 地理(日本)
大問4 歴史
大問5 公民
大問6 3分野総合
記号選択式問題がほとんどですが、記述問題への対応も忘れてはいけません。
大問2の問1は、雨温図を選択する問題でしたが、正答率22・9%とやや難しい問題でした。
また、大問4の問1は紙の製造や印刷に関する事柄を時代の古い順に並べる問題でしたが、正答率は32・4%にとどまっています。古代の歴史についての学習が不足している人が多いようです。
文章による記述問題は2問ありました。このうち大問6の問3は、三つ資料を参照しながら「1997年度と2018年度の政府開発援助(ODA)の変化」について述べる問題でしたが、正答率(部分正答含む)は51・6%とあまり高くありません。資料を正確に読み取る力と、そこから得られる結論を正しく表現する力が求められています。
なお、令和3年度入試では、「私たちと経済」のうち「国民の生活と政府の役割」と、「私たちと国際社会の諸問題」は、出題範囲から除外されます。

【理科】
実験・観察をもとに科学的に思考する

社会同様、各分野からまんべんなく出題されています。
大問1と大問2は各分野からの小問で構成されています。配点は計9問で36点です。9問中6問は正答率60%以上であり、正答率が50%以下の問題は1問しかありません。基礎基本問題中心ですから、しっかりと得点したいところです。
大問3以降は次のような構成になっています。
大問3 地学(16点)
大問4 生物(16点)
大問5 化学(16点)
大問6 物理(16点)
大問3「地学」の問4は、南中高度と地表の温まり方についての計算を伴う問題でしたが正答率8・9%ときわめて低くなっています。これは全問中もっとも低い正答率です。
大問6「物理」の問1は電圧と電流の関係をグラフにかかせる問題でしたが、正答率(部分正答含む)70・2%と比較的よく出来ていました。
各分野とも、基礎的・基本的知識を問う問題はよく出来ていますが、それらを活用し科学的思考に基づいて考察するような問題になると正答率が一気に下がる傾向が見られます。
令和3年度入試では、第1分野「運動とエネルギー」のうち「力学的エネルギー」及び「科学技術と人間」、第2分野「地球と宇宙」のうち「太陽系と惑星」及び「自然と人間」は出題範囲から除外されます。