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神奈川県 「2021年度(令和3年度) 神奈川県内 私立高入試の概況」

コロナ禍の中で書類選考型入試導入校が増加

首都圏の私立高入試で、コロナ禍にもっとも敏感に反応したのは神奈川県ではないでしょうか。三密を避けるため面接を中止する、試験時間を変更する、追加の検査を実施するなどの対応は他の地域でも見られましたが、神奈川県では書類選考型入試を導入した学校が一気に増えました。
推薦入試で導入した学校が5校増えて計6校となり、一般入試で要項発表後に書類選考を取り入れた学校を含め9校増えて合計40校になりました。書類選考実施校は高校募集校の約7割に達します。もともと県内の私立高入試では書類選考型入試が定着しており、これが三密や移動による感染のリスクを防ぐのに適した入試であることから急激に増え、さらに推薦入試にも波及したということです。
もうひとつの大きな変化は国の就学支援金が拡充され、合わせて県の学費支援制度も充実されたことです。
これらの結果、今春の県内私立高入試はどのように行われたかその特徴を見ていきましょう。

入試の特徴

まず一つ目の特徴が難関校に対する敬遠傾向が見られたことです。慶應義塾の一般入試の応募者は126人10・5%の減、法政大学第二の学科試験が95人12・1%減、法政大学国際の学科試験が105人22・2%減といずれも応募者が減少しました。一方で、中央大学附属横浜の一般入試応募者は69人11・9%増、日本大学が79人11・4%増、出願基準を緩和した桐蔭学園が290人11・0%増、一般入試に専願制度を設けた日本女子大学附属が前年度の85人から186人へと倍増、推薦だけでなく一般入試にも書類選考を導入した日本大学藤沢が312人29・0%の大幅増になりました。安全志向によって不合格者が大量に発生する難関校を避け、併願入試などの優遇措置を設けている学校に移動したような動きです。
二つ目の特徴がオープン入試の応募減です。鶴見大学附属が一般AB合わせて46人29・1%の減、鎌倉学園が24人20・7%の減、麻布大学附属は34人24・1%の減になりました。もちろんすべての学校のオープン入試の応募者が減少しているわけではありませんが増加したのは少数に過ぎません。一人当たりの受験校数を減らし、確実な学校に絞って受験した結果と考えられます。
三つ目の特徴は推薦入試の応募者が増加した学校が目立ったことです。三浦学苑が108人53・7%増となったのをはじめ、湘南学院が89人48・9%増、橘学苑が38人46・9%増、英理女子学院が30人34・9%増、横浜商科大学27人26・5%増、相模女子大学32人28・6%増など挙げればきりがありません。
これは授業料の支援制度の拡充が背景にありますが、コロナ禍で公立中学校が休校や分散登校になったことで受験勉強に不安を感じ、5教科を課す公立高入試を避けて学力検査のない私立推薦入試に集まったのではないかと考えられます。
このように、今春の県内私立高入試はさまざまな動きがありましたが、選抜方法で変更された事柄は今年限りになる可能性があります。来春の入試についての情報は今まで以上に注意しましょう。※記事中の増減数と割合は前年度と比較した物です。

「併願ドットコム」から見た検索校
首都圏11万ユーザーが利用している検索サイト「併願・com」のデータから県内私立高校のエリア別検索ランキングを見てみると、次の様な学校が上位にきています。

【川崎・横浜エリア】
山手学院・日本大学・横浜・桐蔭学園・横浜富士見丘・横浜翠陵・中央大学附属横浜・横浜創学館

【横須賀・鎌倉エリア】
鎌倉学園・湘南学院

【県央・湘南エリア】
東海大相模・光明相模原・柏木学園

【小田原・足柄エリア】
相洋

昨年と比べ実際の応募者が増加もしくは安定的な学校と、応募者減の学校がありますが、いずれにしても複数の学校を早い段階から検索し情報収集していたことがうかがえます。
また、県内の受験生が「併願・com」で検索した私立高校を見てみると、川崎・横浜エリアや相模原エリアを中心に東京の品川区・大田区・目黒区や町田市などの私立高校も検索しています。神奈川県内から県外(多くは東京だと推定される)の私立高校への進学者が毎年5,000人程度いることを考えると、広い視野で志望校選びをしている受験生が多いと言えます。来年の受験に挑戦する皆さんも、これからは更に情報を先取りし、自分にあった志望校選びをしていきましょう。
監修:高校入試活性化委員会(株式会社 リヴィジョン)