東京成徳大学高校(木内秀樹校長、普通科・共学)は 今春創立94年を迎えた伝統校である。
「ビッグロック」をキーワードとした独自の生き方指導が注目され、年々その評価は高まっている。また、大学進学実績の上昇も顕著で、その点でも話題を集めている。
変化の激しい時代の教育はどうあるべきか。その答えを求めて試行・改革を続ける同校の現在(いま)をお伝えしよう。
同校はことさらに大学進学実績を謳う学校ではない。結果よりもむしろ出発点や経過に力点を置いて指導する学校だ。それを知った上で今春の大学進学を見てみよう。
東大を含む国公立に42人(対前年1・62倍)、早慶上理など最難関私大に61人(同2・65倍)、GMARCHなど難関私大に209人(同2・05倍)。都内私大の定員厳格化の影響で合格者数が伸び悩む学校も多い中、見事な結果だ。※数字は現浪合計で、のべ数(下段表組参照)
なぜこのような結果が出るのか。それは、意識を高め、心を作る指導に徹してきたからだ。
目標は大事だ。たとえば「どこの大学に入りたいですか」。だが、この学校ではその前に問う「何を学ぶためですか」。いや、もっと前に「なぜ学ばなければいけないのですか」、「なぜ生きるのですか」、「自分とは何ですか」。実に面倒な学校、いや遠回りさせる学校と思われるかもしれないが、これが同校の唱える「ビッグロック」(大きな岩)で、ズッシリと重たいものが心のど真ん中に詰まっているから、ちょっとやそっとでは動じない、ぶれない、あきらめない。
折れない心で最後まで戦いきった結果が冒頭の合格実績だ。
「主体的・対話的で深い学び」。これは新しく改訂された学習指導要領に見られる言葉で、これからの学習のあるべき姿を示したものだ。
だが、ここに示された「主体的」あるいは「深い学び」は、同校にとって目新しい言葉ではない。
同校が独自に開発した学習プログラム「自分を深める学習」がスタートしたのは、かれこれ10年前だ。
最近になって注目され始めた「深い学び」は、自分を深め、学びを深めることを追求してきた同校にとって、目新しいテーマではないということを強調しておこう。
同校の特色ある教育プログラムの中から、2つほど紹介しておこう。
■戸隠高原での校外合宿
「自分を深める学習」の一環であるこの合宿は一年生の夏に行われる。
教室を離れ自然の中で友と語り合う。「友情とは」、「愛とは」、「生きるとは」。「自分とは」。たぶん、普段なら照れくさくて、とてもではないが人前で語ることなどできないだろう。いや、それ以前に考える機会すらないだろう。進路指導には何の関係もないような行事だが、この中で生徒たちは、学ぶ目的をしっかりと心に刻む。
■DDR(ディスカッション&ディスカバリー・ルーム)
新しい大学入試制度では英語4技能の力量が問われるが、その対策の一つとしてDDRを設置した。ここには5人のALTが常駐する。ネイティブスピーカーとの議論を通じて、単なる会話を超えた実践的コミュニケーション力を身に付けて行く。留学相談に訪れる生徒も多い。
なお、英検に関しては昨年度から全員受検としている。
先生たちの授業力向上にも積極的だ。
同校が目指す良い授業とは、授業を受けた後、「もっと自分自身で学びたくなる授業」、つまり、主体的な学びにつながる授業だ。
分かる授業や楽しい授業ならイメージしやすいが、自分でもっと深く学びたくなる授業とはどんなものなのだろう。11月に授業公開日が設定されているので、受験生の皆さんは、ぜひ自身の目で確かめていただきたい。
文「部」両道。
いわゆる文武両道だが、同校では「武」に部活動の「部」の字を当てている。
部活動の意義をより強調した表現だが、これは結果だけを追い求める勝利至上主義を意味するものではない。
もちろん、今夏インターハイで3回戦まで進出した女子バスケットボールのような強豪部活もあるし、その他の部も関東あるいは全国を目指して活動している。だが、冒頭にも述べたように、この学校には何事においても結果だけでなく出発点や経過を大切にするというポリシーがある。
文あっての部、部あっての文。
文で得た主体的で深い学びは、部での技術追求に生かされるだろう。部で得た体力と精神力は、文での最後の頑張りで生かされるだろう。だから、部活動への加入は、強制はしないが積極的に勧める。部は文字通り部活動であってもいいし、生徒会や学校行事であってもいい。同校の文「部」両道はそういう意味だ。
「今年の大学受験でも、最後まで自力で学ぶ姿、主体的に学ぶ姿が目立ちました。仲間同士励まし合いながら学ぶ姿には心を打たれました」と、野中修也副校長は話す。
目を見張る進学実績は、文「部」両道の学校生活と、考えつくされた進路指導がもたらした必然的な結果なのだ。
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