よみうり進学メディア

特選記事
2024.5.17

特別寄稿「志望校は広い視点で選ぼう!」大学通信 伊沢秀先生

多くの情報の中から高校を選ぼう

私立高の魅力は、公立高にはない様々な取り組みができることです。その内容は各高校によって異なります。授業方法やクラブ活動、課外活動、学外研修などにおいて、自分が成長できると感じられる高校を選びたいものです。

自分に適した高校を知るために活用したいのが、複数の学校が集まって行われる合同説明会や各高校が独自に行う説明会などです。コロナ禍ではオンラインなどで実施されていましたが、今は対面もしくはオンラインとの併用になり、高校ごとの特徴をしっかりと比較できるようになりました。
高校の状況をきちんと把握できる機会を有効的に活用することにより、数多くの高校の取り組みについて、積極的に調べてみることをお勧めします。

多彩な教育を展開している私立高

学校説明会などに参加して様々な情報を得たら、今度は具体的な高校選びに入ります。その際、後悔をしない高校選びをするために大事なのは、どのような視点でしょうか。

一般的に志望校を選ぶ時には、内申点と偏差値を重視しがちです。しかし、志望する高校の魅力は、それだけではわかりません。自分の持っている成績だけで高校を選ぶのは、合格可能性の高い高校を選んでいることと同じです。つまり、「入れる高校」選びをしていることになります。

大切なのは、「入りたい高校」選びをすることです。ぜひ、この高校で3年間を過ごしてみたいと思える高校を選びたいものです。そのためには、もっと広い視点から探してみてはどうでしょうか。例えば男女別学、共学のどちらがいいのか、通学しやすいか、遠くても3年間通い続けられるのかどうかなどです。私立高なら校風や建学の精神にも注目しましょう。部活動や学校行事が盛んなのか、学習の支援体制はどうなのか、学校の勉強だけで志望大学に進学できるのか、図書館など施設・設備の充実にも気を配りたいところです。

それ以外でもグローバル教育にどう取り組んでいるのかも大切です。皆さんが大学に進学して就職する頃には、日本のグローバル化はさらに進んでいます。将来、就職して海外勤務になることは当たり前になり、ともに働く外国人の同僚も増えていきます。そんな時に海外の人と、どうコミュニケーションをとり、理解しあうのか、ということが重要になります。そのために、グローバル教育がどう行われているのかもチェックしましょう。

大学合格実績は高校選びの重要項目

数ある学校選びの基準の中で、大切なのが大学合格実績です。今や大学進学率は55%近くなっています。当然ながら、どこの大学に進学できるのかも重要な基準になるのです。

大学合格実績のこの10年を見ますと、埼玉の高校全体で確実に難関大の合格者が増えています。
2024年の最難関の「東京+京大」の合格者数は、県全体で10年前を35人上回る170人になりました。東大合格者の県内トップは浦和で44人。以下、大宮と栄東が各19人、川越・県立と開智が各7人の順でした。
次に旧7帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)の合格者合計を2014年と2024年で比較すると、埼玉の高校全体では401人から535人に伸びています。
また、全国に50校ある国公立大の医学部(医学科)合計は102人から112人に10人増でした。県内トップは浦和の18人で、開智13人、大宮12人、浦和明の星女子9人の順でした。国公立大医学部は難関で、東大や京大の理工系学部と同じほど難関なところが多くなっており、その合格者が増えているのです。

私立大トップの早稲田大と慶應義塾大の合計合格者数を見ると、国公立高は986人で、私立高は990人。卒業生数は国公立高が私立高の約2倍なのに、私立高のほうが合格者が多いことが分かります。

なぜ、私立高はこれほど伸びたのでしょうか。何もせずに大学合格実績が伸びることはありません。私立高は努力を重ね、生徒の第一志望の大学合格を果たすための取り組みを、積極的に行ってきたからに他なりません。早朝0時間目の授業や、放課後の補習授業、夏期講習や冬期講習、勉強合宿などを行い、努力と工夫で生徒の学力向上に力を注いできました。最近ではグローバルコース、特別進学コース、国公立大コースなどコース制を取り入れている学校も多くなっています。授業でもアクティブラーニングを取り入れ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などを磨く最先端の教育を展開しています。

そうはいっても、私立高は勉強漬けではありません。今は勉強だけしていれば、学力が大きく向上することはないと言われています。部活動や学校行事、海外研修、フィールドワークなどに励むことで、学力も伸びていきます。

大学入試は大きく変わっている

2021年の大学入試改革により、大学入学共通テストが始まりました。共通テストの解答方式はマークシートですが、高い思考力が求められる出題形式になっています。

東大や京大の2次試験はもちろん、入試改革以降、早稲田大や上智大が一般選抜で記述問題を導入するなど、単純に覚えた知識を再生するだけでは太刀打ちできない、思考力を問う入試が進んでいるのです。もちろん、どのような問題が出題されようとも、基礎、基本は変わりません。基礎力をしっかりつけ、その上で、自ら考える問題が出題されるのです。

一方で、探究活動や課外活動など、高校時代の教科学習以外の取り組みが評価される、総合型選抜や学校推薦型選抜といった、いわゆる年内入試の定員を増やす大学が増えています。私立大は定員の半分以上が年内入試で合格が決まっています。

前述の通り、私立高は勉強以外の多様な経験ができることから、年内入試にきちんと対応できる高校が多くあります。もちろん大学入試のために生徒に多様な挑戦をさせるわけではありません。大学合格だけでなく、その先の社会で求められる社会人基礎力の育成を行っているのです。

自分の能力を伸ばすのに最適な高校はどこなのか。公立や私立の枠組みにとらわれることなく、志望校を選んでいきましょう。

 

(㈱大学通信 情報調査部長 伊沢秀先生)

関連記事