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2024.9.20

特別寄稿「人気高まる私立高の魅力」 大学通信情報編集部 大野香代子先生

近年、私立高の人気が高く、高校入試で公立高ではなく私立高を第一志望にする受験生が増加しています。私立高のどのようなところに魅力があるのでしょうか。

独自の建学の精神が育む校風と伝統

私立高には必ず創立者がいて、その創立者の教育理念に基づいた教育が行われています。そのため、私立高には学校の数だけ個性があるといってよく、同じ校風の学校はありません。
その多様な個性は「質実剛健」「独立自尊」「報恩感謝」などの建学の精神にも表れています。どの学校でも同じ教育を目指している公立高とは対照的です。

また、キリスト教や仏教など、宗教を基本理念とした教育を実施している学校があります。
聖書や仏教などの授業や、礼拝や座禅会などの行事が行われています。宗教理念が教育や行事に取り入れられ、人間教育が行われています。

 

多様な教育カリキュラム

教育課程にも独自の特色が表れています。
現在の新学習指導要領には国語、数学、外国語、理科、地理歴史、公民などの教科があります。それぞれの教科には、現代の国語、数学Ⅰ、英語コミュニケーション、科学と人間生活、歴史総合などの科目が設置されています。
科目の単位数はその学校の裁量にある程度はまかされています。例えば理数系科目を増やしたカリキュラムを作成することも可能です。少人数制授業や習熟度別授業を上手に取り入れ、同じ学力の生徒を集めて効果的に学習を進めています。

最近は、生徒の興味や関心に合わせて、第二外国語や教養科目など、バラエティにあふれた選択科目を設置する学校が増えてきました。

 

一方的に講義を受けるだけではなく、生徒が自主的にテーマを決め、調べ学習やその成果をプレゼンテーションする探究の授業も盛んです。もともと多くの私立高で、独自のアクティブラーニングが行われていましたので得意分野と言えます。
さらにICT(情報通信技術)も積極的に取り入れられています。生徒1人1台のタブレットやPCを揃え、電子黒板も活用されています。コロナ禍での一斉休校中に、ICTを利用したリモート授業を継続し、生徒の学びをサポートした実績も評価されています。

そのほか、朝の0時限目や放課後の7時限目を設定して補習を行い、長期休暇中には集中的に講習を実施しています。

 

また、生徒の将来の進路希望ごとに、コースを設定している学校が多くあります。難関大進学を目指す特進コース、医学部を目指す医進コースなど。

クラブや課外活動を熱心に行うなど、高校生活を楽しみながら大学進学を目指すコースも多くあります。
また、英語や国際教育に特化したグローバルコース、理数系科目重視の理数コース、さらに体育や保育のコースなどがあり、多様なコースが設置されています。

国際理解教育も積極的に行われています。今年はようやく海外修学旅行や語学研修にも行けるようになってきました。4技能重視の英語教育や海外のネイティブとのオンライン英会話も行われています。IB(国際バカロレア)資格が取得可能なプログラムや、海外英語検定のスコアアッププログラムを整え、海外大学への進学希望をかなえている学校もあります。

 

増加が顕著 難関大合格者数

近年、埼玉県の私立高は難関大合格実績を伸ばしている学校が増えています。
東大や京大、東北大をはじめとした難関国立大や、早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)などの難関私立大の合格者が増加しています。
効率的で面倒見の良いカリキュラムで学力を伸長させた結果、現役合格者が多いことも特徴のひとつです。

公立高にはない特徴として、私立高には大学付属校があります。
併設の大学や短大へ優先的に入学できる制度があるため、大学進学に有利です。ただし、優先入学には条件があり、それをクリアしないと内部進学はできません。卒業すれば全員が進学できる学校から、ほとんどの生徒が他大学へ進学する学校まで、内部進学状況は学校によってさまざまです。

付属校を選ぶときは、優先入学の条件を把握しておかなければなりません。最近は、生徒の多様な進路希望に対応するため、併設大への優先入学の権利を持ちながら、他大学受験が可能な進学付属校が増えています。

 

手厚いサポート制度

埼玉県の私立高入試には単願受験と併願受験があります。いずれも内申点の出願基準があります。
単願はその高校を第一志望とする受験生が利用し、併願は公立高が第一志望で私立高がすべり止めの場合、利用します。出願基準は、併願が単願より高めなのが普通です。

2学期半ばには受験校を決定するために生徒と保護者、中学の担任の先生との3者面談が行われます。それまでに、自分で志望校を探さなければなりません。
そのためには学校説明会やオープンキャンパスなどに参加して、実際に学校を自分の目で見ておく必要があります。文化祭に参加して、在校生の様子を見るのもいいでしょう。

 

埼玉県では公立中学の先生と高校の先生との間で行われる「入試相談」がありません。
そのため、受験生と保護者が高校の説明会に行き、中学の成績や模試の偏差値などを利用して、高校の先生と直接個別相談をしなければなりません。そのため、9月に実施される外部模試を必ず受けて、自分の成績資料を確保しておくことが大切です。

私立高の学費は公立高に比べて高いと心配されている家庭もあると思います。しかし今は、国による就学支援金のほかに、各地方自治体による学費の軽減措置があります。
埼玉県はその内容が充実しており、少ない負担額で私立高に通うことが可能です(下図)。
そのほか、私立高には独自の奨学金制度が用意されていますので、志望校の募集要項などで確認してください。

 

(㈱大学通信情報編集部  大野香代子先生)

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