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2024.11.15

特別寄稿「3年後の大学入試を意識して 高校選びをしよう」大学通信情報編集部 大野香代子先生

大学入試の選抜方法は主に3つ

少子化が進み、以前よりも大学入試で合格しやすくなっています。大学数や入学定員も増加していますので、近い将来、大学全入時代が来るとも言われています。
人数の上では易しくなったように見えますが、国公立大や難関私立大に進学しようとすると、まだまだ厳しい競争があります。
大学入試で希望の大学や学部・学科に進学するためには、高校選びから大学入試を意識しておくことが重要です。

大学入試には、一般選抜と学校推薦型選抜、総合型選抜があります。一般選抜は学科試験を受け、当日の試験の成績で合否が決まります。

学校推薦型選抜には指定校制と公募制があります。指定校制では応募できる大学が高校によってあらかじめ決められていますが、公募制は制限がありません。どちらも、高校在学中の成績基準があるのが一般的です。

総合型選抜は前身がAO(アドミッション・オフィス)入試で、学校長の推薦や成績基準は原則としてありません。高校在学中に、探究・研究活動やクラブ活動、ボランティア活動など、自分が熱心に取り組んだ内容をアピールする入試です。入学後の学ぶ意欲を示します。

2023年度大学入試では、一般選抜の入学者の割合は、国立大が約8割、公立大が約7割、私立大が約4割でした。学校推薦型と総合型選抜での入学者は、国立大が約2割、公立大が約3割、私立大が約6割です。
国公立大ではほとんどが一般選抜で入学するのに対し、私立大では学校推薦型と総合型選抜の方が多くなっています。今後は、国公立大も、一般選抜以外の入学者を増やしていく傾向があります。

 

大学合格実績を参考にしよう

学校案内やホームページなどで、志望校の大学合格実績を調べてみましょう。

国公立大合格者が多ければ、1月に実施される大学入学共通テストを受け、一般選抜で受験している生徒が多くいます。難関私立大も、学校推薦型は指定校が中心で、総合型選抜の人数枠も少ないので、一般選抜での受験が中心になります。

国公立大合格者が少数で中堅私立大の実績が多い学校では、一般選抜の他に学校推薦型や総合型選抜を選ぶ生徒が多くなります。中堅私立大の学校推薦型は公募制が多いので、成績基準をクリアすれば、どこの高校から誰でも受験できます。

そのような学校では、主要教科の学習だけでなく、選抜に必要な小論文や面接の対策も熱心に行われています。在学中の探究学習などを利用して総合型選抜を受験する生徒も多く、そのための指導が工夫されている学校も多くあります。

 

埼玉の高校の難関大合格実績

この10年の大学合格実績を見ますと、埼玉県の高校全体で確実に合格者が増加しています。2014年と2024年を比べてみましょう。旧7帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)の合格者合計は、公立高は258人から349人、私立高は143人から187人に増加。国公立大医学部医学科は合計で公立高は57人から60人、私立高は45人から51人に伸びています。

また、難関私立大の早稲田大と慶應義塾大の合格者を見ると、私立高は984人から990人で微増ですが、公立高は1,108人から983人に大きく減っていました。これは2016年から始まった私立大入学定員厳格化で合格者数が絞られた影響があると思われます。

そんな中で、私立高の人数が減らなかったのは、生徒の学力を伸ばすために工夫されたカリキュラムや教職員の熱意ある指導の結果です。親身になって生徒や保護者の相談に乗る、面談を繰り返すなど、きめ細かい進路指導によるところが大きいと見られます。これは私立高が独自の教育理念で教育を行っているからできることです。

公立高では平等を大切にし、原則としてどの学校でも同じ教育を目指しています。そのため、各校の指導力というよりも、生徒個人の努力による成果の方が大きいと言えるでしょう。

また、勉強だけをする学校生活では大学合格実績が伸びないことも、よく知られています。部活動や学校行事など、バランスをとりながら総合的に力を入れている学校が実績を伸ばしています。

 

埼玉の高校入試で確実に合格するには

高校等への進学率は約99%に達し、ほとんどの人が中学を卒業すると進学します。高校は義務教育ではないので、入試に失敗すると進学する高校がありません。それだけに不合格になれないプレッシャーがかかります。

埼玉の私立高入試は来年の1月22日から始まります。私立高入試には単願と併願があり、各校独自に何回も実施されています。しかも、特進、進学などコース別に募集している学校がほとんどです。

一方、公立高の学力検査は2月26日の1回だけです。そのため、実力よりランクを下げて、安全で確実に合格を目指す傾向が強くなっています。
しかし、それは同時に、受験生の可能性を狭めていることにつながっています。公立高が第一志望なら、併願で私立高の合格を確保しておけば、実力相応の公立高に落ち着いて挑むことができます。

また、最近は私立高の人気がアップし、第一志望校にする受験生も増えています。大学合格実績が良いことはもちろんですが、それぞれの建学の精神に基づいた個性的な教育が行われています。クラブ活動や学校行事が盛ん、施設設備が充実、大学付属校など、魅力はバラエティに富んでいます。大学との高大連携が盛んな学校もあります。ICT教育やグローバル教育も熱心に行われています。

 

埼玉県独自の手厚い学費補助制度

私立高は学費が高いから経済的に難しいと思われがちですが、今は公的な補助制度があります。
公私の学費の差ですが、実は就学支援金によって、公立高だけでなく私立高でも、同じ金額だけ値下がりしています。

埼玉県の私立高の24年度授業料平均は年額約40万2,658円です。そこから国の就学支援金の年額11万8,800円を引いて換算しますと、授業料は月額約2万3,655円になります。もちろん、これ以外に施設設備費などの負担は必要ですが、授業料はかなり減額されます。

それだけではありません。埼玉県では私立高進学者への独自の補助制度を設けており、年間の保護者の負担はさらに小さくなっています。この制度は「埼玉県父母負担軽減事業補助金」と言われるものです。私立高に進学して学びたいのに、経済的な理由であきらめないようにという配慮から設けられました。

年収約720万円未満の世帯では、国の就学支援金に埼玉県独自の補助をあわせると合計で年間40万3000円が支給されます。これで授業料のほぼ全額を賄えることになり、実質授業料無償化が実現しています。
また、全日制高校の場合、年収約609万円未満の世帯には、入学金について10万円が補助されますし、年収約500万円未満の世帯には、施設費その他の納付金補助として、施設費等の平均額である20万円が支給され、学納金のほぼ全額が賄えます。加えて家計急変の家庭のための補助制度もあります。
さらに授業料以外の教育費の負担を軽減するため、返済の必要のない「奨学のための給付金」を支給しています。生活保護世帯に5万2,600円、年収約270万円未満の世帯に14万2,600円~15万2,000円が支給されます。

このように埼玉県には手厚い支援制度があります。これを活用しない手はありません。
そのほか、私立高での入試で優秀な成績だった受験生を対象とした特待生制度や奨学金制度を設けている高校もあります。募集要項に記載されていますので、志望校が決まったらよく調べてみてください。

 

(大学通信情報編集部 大野香代子先生)

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