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特選記事
2020.11.20

特別寄稿 「人気高まる私立高の魅力」㈱大学通信 安田賢治先生

秋になり、いよいよ来年入試に向けて、本格的に受験勉強を開始する季節となりました。今年は新型コロナウイルス感染症の影響で、学校や塾に行けない時期があり、不安に思う受験生も多いのではないでしょうか。しかし、これはみんな同じ条件です。自分だけが不利ということはありませんので、必要以上に気にすることはないでしょう。

このコロナ禍による学業遅れへの配慮から、埼玉県の公立高校入試では、各科目の出題範囲からの除外が公表されています。来年入試は今年に比べて3割程度少なくなります。ただ、勘違いしないでほしいのは、除外された出題範囲は、入試には出題されないということであって、勉強しなくていいということではありません。たとえば中学3年生の教科書に出てくる漢字の読み書きは出題されません。しかし、高校入学後には当然のことですが必要になります。しっかりと学んでおきましょう。

また、本番の入試でも、コロナ対策が取られることは間違いありません。マスクをしての受験、試験会場は各科目終了ごとに換気されることになりますから、服装などにも注意が必要です。コロナ感染症にかかってしまうと、受験できないことになってしまいます。来年入試では、何よりも体調管理が重要です。

志望校選びも本格化する時期

入試への心配が大きいことはわかりますが、この時期、大切なのは受験勉強だけではありません。それと同じぐらい志望校選びも大切です。
高校入試では、公立高第一志望の人が多いのが普通です。ただ、公立高第一志望の受験生でも、私立高併願は当たり前です。公立高の受検チャンスは1回しかありません。落ちると大変ですから、私立高を併願しておくのは必須です。私立高について詳しく調べておく必要があります。
公立高が万一ダメだったことを考えると、私立高には必ず合格しておかなければなりません。進学したい私立高の合否判定が五分五分だった場合、志望を下げて安全な高校の受験に変えるのか、そのまま志望を貫くのか、それとも2校以上受験するのか、学校選びが難しくなってきます。

私立高人気アップその理由は?

近年は私立高人気がアップしています。私立高の特色は、バラエティに富んだ教育にあります。大学進学のサポート、海外研修・留学などのグローバル教育の推進、フィールドワークなど社会と結びついた学び、部活動の充実、生徒中心の学校行事の開催、双方向のアクティブラーニングの授業、パソコンなどを使ったICT教育に力を入れている学校が数多くあります。こういった教育を通して、生徒を伸ばしているのです。

幅広くいろいろな形で学ぶことで、学力がアップしていきます。さらに、大学の付属校では、併設大学に内部進学できます。こういった特色を、いくつも併せ持っている学校は少なくありません。これ以外にも、コース制をとっている学校もあります。数多く用意されたコースの中から、自分の将来の目的にかなう進学先を選んでいくことができます。

一方、公立高は県や市が設置した学校で、違いはほとんどありません。学校の独自教育を行えるのは、私立だからできることです。それ以外にも私立高が人気の理由はたくさんあります。たとえば大学合格実績が伸びていることです。埼玉の私立高では、東京大など難関国立大の合格者が増え、早慶上理(早稲田大、慶應義塾大、上智大、東京理科大)、MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)などの難関私立大合格者が年々増えています。それだけでなく、現役合格者が多いことも人気の理由です。

また、いじめ問題も社会の注目を集めていますが、私立高では早くから、いじめだけではなく、心の教育に取り組んできました。そのため、カウンセラーを常駐させたり、いじめ問題について蓄積されたノウハウを活用して、早期解決に向け教職員が一丸となって取り組んでいます。

最近、注目を集める大学入試改革への対策にも早くから取り組んできました。来年から今まで行われていた大学入試センター試験に代わり、大学入学共通テストが実施されます。ところが、その共通テストの目玉であった英検やGTECなどの民間英語試験の成績活用、記述式問題の出題は見送りになりました。その結果、今までのセンター試験とは大きく変わりません。しかし、今後、どうなっていくかは、まだわかりません。ただ、確実に変わるのは、今回の大学入試改革の狙いであった、今までの入試を多面的評価に変えていくことです。学校推薦型選抜(旧・推薦入試)や総合型選抜(旧・AO入試)に学力を求めています。一般選抜では、学力だけでなく高校での活動の評価を取り入れます。つまり、高校で勉強ばかり、部活動ばかりではなく、いろいろなことにチャレンジしてきた人材を大学が求めているということです。私立高では、チャレンジする機会を豊富に設けています。積極的にその機会を活用することが大切です。

私立と聞くと、学費に頭を悩ませる保護者の方もいるかもしれません。公立高の授業料負担減ばかりがクローズアップされていますが、私立高の学費も公立高と同じ金額だけ値下がりしています。また、埼玉の奨学金制度は充実しています。

学校選び、じっくり検討して

自分にあった魅力あふれる私立高を選択したいのであれば、説明会、オープンスクール、体験入学などを上手に活用したいものです。コロナ禍で中止になっているものもありますので注意が必要です。また、入場者を制限している説明会もありますので、事前に申し込んでおくことが大切です。学校に行ってその雰囲気を知り、生徒の様子などを見て、自分に合うかどうかを判断するのがベストです。コロナ禍でそれもままなりませんが、志望校の情報はできる限り入手しておきましょう。

偏差値や大学合格実績だけで選ぶのではなく、各校の特徴をしっかり把握した上で、受験することが大切です。一生の母校となるわけですから、じっくり検討して選びましょう。
(㈱大学通信 安田賢治先生)