入試の合否は基本的には学力検査得点と調査書得点の合計で決まります。入試の種別により、さまざまなバリエーションがありますが、多くの場合、基本はそのようになっています。ですから、調査書の得点が低いからといって諦めるべきではなく、その分を学力検査得点で補えばいいのです。また、それ以外に打開策はありません。
あくまでも目安ですが、5教科500点満点の試験で偏差値50の人が偏差値55まで引き上げるためには、あと50点ぐらい必要です。1教科あたり10点という計算です。お手元に過去に受けた模試資料があれば、偏差値50だった自分の得点と、偏差値55の得点を比較してみてください。そうすれば、偏差値をあと5ポイント上げるために必要だった得点がよりはっきりするでしょう。
偏差値50と55の差は大きいと言えば大きいのですが、挽回不可能な差かというと、そこまでは言えないと思います。一気には詰められないかもしれませんが、50のものが52か53まで上がれば、その先が見えてくるでしょう。
偏差値50前後ということは、ちょうど平均点あたりということになりますが、この近辺にいる人は、比較的易しい問題や、ごく基本的な問題を落としているケースが多いものです。模試の後に返却される資料には、小問ごとの正答率データなどもあると思いますので、そこを見てみましょう。7割、8割の人が出来ている問題を間違っていませんか。手も足も出なかったのではなく、取れるはずの点を取れていないのではありませんか。いずれにしても、まだ諦める時期ではないですね。
この時期になると増えてくる質問です。
一般論として言えば、早い方がいいに決まっています。私立は学校ごとに入試の仕組みや試験内容、問題傾向が異なります。公立はそれほどではありませんが、学校ごとに試験内容や問題傾向が異なる場合もあります。そう考えれば、早く志望校を決め、対策に時間をかけた方が、事はより有利に運べるでしょう。
その一方、「どうしてもここに行きたいという学校がない」という、あなたの現在の状態は、それほど責められることではないようにも思います。これが食べたいというものがない時、これが欲しいというものがない時、そういう時って、ありますよ。だから、今はそういう時なんだと、ありのままの自分を受け入れましょう。
そのうえで、やはり受験生なのだから、学校のことを調べたり、学校を見学したり、そういう活動は続けてください。何もしないのに、ある日、行きたい学校が急に天から降りてくるなんてことはありません。
おススメの方法のひとつは、今まで見たり調べたりした学校の中から、「第一希望(仮)」を決めてみることです。あくまでも(仮)ですから、いつでも変更可能です。たまたま見に行った学校が「第一希望(仮)」よりもいいなと思ったら、今度はそこが「第一希望(仮)」に入れ替わります。そんな繰り返しの中から、自分の気持ちを強く揺さぶる学校が出てくると思いますよ。
あともうひとつ、それはそれとして勉強はちゃんと続けてください。そうしないと選択肢が少なくなってしまいます。
今からでも充分間に合うので、諦めないでください。
作文が苦手な人に限って、上手く書こうとしますから、まず、この考え方を捨てましょう。
この場合の上手くというのは、読み手(=採点者)を感動させたり、感心させたりするような名文を書こうとすることですが、入試の作文ではそのようなことは求められていません。また、人と違ったことを書いて目立とうとするのもやめましょう。それも求められていません。肩の力を抜き、特別なことを書こうとせず、普通に書きましょう。
作文で心がけなければいけないのは、ひとつは形式、もうひとつは内容です。
入試作文の場合は条件が付けられます。ですから、自由作文に対して条件作文などと呼ばれます。
何段落で書け。何行以上何行以下で書け。これらは中身と関係ありませんから形式です。当たり前のことですが、まず形式に則って書くことから始めましょう。これだけで減点が避けられます。入試作文は多くの場合減点法で採点されますから、とても大事なことです。
内容についてよくある失敗は、「何々について書け」とテーマを与えられているにも関わらず、テーマから離れたことを書いてしまうことです。まさかと思われるかもしれませんが、実は結構多いのです。いま自分が何について書いているのかを強く意識しながら書くようにしましょう。
苦手な人は、一文の長さを短めにしましょう。長くすると文法的な誤りも発生しやすくなります。書き言葉と話し言葉を意識しましょう。ここも減点されやすいところです。
過去問をやるのはいいですね。過去問抜きの受験勉強などあり得ませんから、めげずに続けましょう。
ただ、そうは言っても、出来ない問題、分からない問題が多いと、落ち込みますよね。そこで今回、ひとつのやり方を提案します。それは、答えや解説を見ながら、または教科書を見ながら解いていくという方法です。
でも、それでは実力で解いたことにはならないのでは?
その通りです。でも、あなたは実力を確認するために過去問を解いているのではなく、実力をつけるために解いているのではないですか。だったら、最初は何かの助けを借りてもいいと思いますよ。
最初は誰かに道案内してもらって目的地に着く。あるいは地図アプリを頼りに目的地に着く。そのうち案内や地図がなくても自力で目的地に着けるようになる。これ、どこかまずいところありますか。料理だって最初はレシピをいちいち見ながらだけど、そのうち何も見ないで作れるようになるでしょう。
大事なことは、最初から自力で解けることではなく、最終的に自力で解けるようになることです。そのためには、まず正しい解き方を覚えてしまうことです。
最初のうちは答えや教科書を見ながらしか解けなかったけど、2、3回繰り返しているうちに、今は何も見ないで過去問5年分、全部自力で解けます。これが過去問をマスターしたということです。
勉強にはさまざまなやり方がありますから、これが絶対とか、これが正しいというつもりはありません。ひとつの方法として紹介しました。
コロナ禍における入試ならではの悩みですね。
文化祭については学校の雰囲気を知る良い機会ではありますが、年に一度の特別な日であって日常ではありませんから、中止になったとしても学校選びへの影響はそれほど大きくはないでしょう。
ただ、説明会がないのは困りますね。緊急事態宣言が解除されれば、説明会を再開したり、追加したりする学校も出てくるでしょうから、そこに期待するしかありません。
学校によっては、土曜日などに授業公開を実施している場合もあります。また、平日午後、個人での見学を受け入れている場合もあります。
筆者(回答者)は元教員なので、やや高校寄りの発言になってしまいますが、高校側としても別にやりたくないわけではなく、やりたくてもできないという苦しい状況なのだと思います。
申し訳ありませんが、筆者に名案はありません。あったとしてもそれを実行できる立場にはありません。
受験生や保護者の皆様には、今のこの悩みや不安を直接高校に伝えるのも一案ですが、まず中学校の先生にご相談されるのがいいと思います。中学校の先生は生徒を送る側、高校の先生はそれを受け入れる側と立場は異なりますが、生徒の進路に責任を負っているという点では同じです。もし、中学校・高校の先生方がこの文をお読みになっているとしたら、ぜひ力を合わせてください。今のこの状況が生徒の不本意な学校選択につながってはなりません。どうかよろしくお願いします。
塾の先生のアドバイスですが、「何度か」ではなく「何校か」と言われたのではありませんか。回数を増やしたからといって合格の可能性が高まるわけではありません。ただ、学校側から、もう一度来てくださいと言われることがあるかもしれません。またご自身としても、一度では聞ききれないことがあって、もう一度というお気持ちになるかもしれませんから、その場合は納得がいくまで訪ねればいいと思います。
話し上手とか、口下手とか、そういうのは一切気にしないでください。話すのが苦手だったら、質問内容をあらかじめメモして行きましょう。そして、面談のときはコソコソ見ないで、相手の先生から見えるぐらいに堂々とテーブルの上に置いて質問しましょう。
個別相談は面接試験ではないのですから、どんな些細なことでも遠慮せず聞くことにしましょう。説明会で質疑応答の時間があったとしても、そこで質問するのは勇気が要りますね。こんな質問をして他の人がどう思うかなどと想像したら、たいていの人は躊躇します。その点、個別相談は他人の目や耳を気にする必要はありません。何でも聞いてもらうための個別相談なのです。
何よりも先生方は相談のプロです。仮に「何を聞いたらいいか分からないんです」と言ったとしても、ちゃんと話題を見つけてくれますし、あなた自身も気づいていない疑問や不安にもきっと気づいてくれることでしょう。
(回答者:教育ジャーナリスト 梅野弘之)