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2023.5.29

特別寄稿「志望校は広い視点で選ぼう」 ㈱大学通信 伊沢秀先生

アフターコロナの志望校選び

新型コロナウイルスの扱いが一般的なインフルエンザと同じ5類感染症扱となり、コロナ禍の出口が見えてきました。2022年度の卒業式や2023年度の入学式がマスクなしで行われるなど、授業や課外活動などの学校生活も日常の姿を取り戻してきました。
コロナ禍前と変わらない中学生活が戻ってきたことから、2024年度の高校入試に向けた準備も安心して進められるのではないでしょか。
学校が集まっての合同相談会や各学校の説明会も、通常の状態に戻っています。積極的に活用することによって、間違いのない高校選びを心掛けたいものです。

多彩な教育を展開している私立高

日常が戻る中で、コロナ禍のような志望校選びの制約がなくなりました。これまでの学校を選ぶための情報が制限された状況に比べると、恵まれた環境と言えるのではないでしょうか。

一般的に志望校を選ぶ時には、内申点と偏差値の重視になりがちです。
しかし、志望する高校の魅力は、それだけではわかりません。自分の持っている成績だけで高校を選ぶのは、合格可能性の高い高校を選んでいることと同じです。つまり、「入れる高校」選びをしていることになります。
大切なのは、「入りたい高校」選びをすることです。志望校で3年間本当に過ごしたいと思える高校を選びたいものです。
そのためには、もっと広い視点から探してみてはどうでしょうか。
例えば男女別学、共学のどちらがいいのか、通学しやすいか、遠くても3年間通い続けられるのかどうかなどです。私立高なら校風や建学の精神にも注目しましょう。部活動や学校行事が盛んなのか、学習の支援体制はどうなのか、学校の勉強だけで志望校へ進学できるのか、図書館など施設・設備の充実にも気を配りたいところです。

それ以外でもグローバル教育にどう取り組んでいるのかも大切です。皆さんが大学に進学して就職する頃には、日本のグローバル化はさらに進んでいます。将来、就職して海外勤務になることは当たり前になり、ともに働く外国人の同僚も増えていきます。そんな時に海外の人と、どうコミュニケーションをとり、理解しあうのか、ということが重要になります。そのためにグローバル教育がどう行われているのかもチェックしましょう。

大学合格実績が伸びた理由は?

たくさんある学校選びの基準の中で、大切なのが大学合格実績です。今や大学進学率は56%を超えています。当然ながら、どこの大学に進学できるのかも重要です。

大学合格実績のこの10年を見ますと、埼玉の高校全体で確実に合格実績が上がっています。
23年度の最難関の「東京+京大」の合格者数は県全体で149人でした。東大合格者の県内トップは浦和で36人、大宮19人、栄東13人の順でした。
次に旧7帝大(北海道、東北、東京、名古屋、京都、大阪、九州)の合格者合計を13年度と23年度で比較してみましょう。埼玉の高校全体で368人から493人に伸びています。
また、全国に50校ある国公立大の医学部合計は97人から110人に13人増でした。県内トップは浦和と栄東で21人、大宮11人、浦和明の星女子と開智がともに7人の順でした。国公立大医学部は難関で、東大や京大の工学部系と同じほど難関なところが多くなっています。
私立大トップの早稲田大と慶應義塾大合計の合格者数を見ると、国公立高は1030人で、私立高は908人。卒業生数は国公立高が私立高の約2倍ですから、私立高のほうが合格の割合が高いことが分かります。

なぜ、私立高はこれほど伸びたのでしょうか。何もせずに大学合格実績が伸びることはありません。私立高は努力を重ね、生徒の第一志望の大学合格を果たすための取り組みを、積極的に行ってきたからに他なりません。

早朝0時間目の授業や、放課後の補習授業、夏期講習や冬期講習、勉強合宿などを行い、努力と工夫で生徒の学力向上に力を注いできました。
最近ではグローバルコース、特別進学コース、国公立大コースなどコース制を取り入れている学校も多くなっています。
授業でもアクティブラーニングを取り入れ、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力などを磨く最先端の教育を展開しています。

そうはいっても、私立高は勉強漬けではありません。今は勉強だけしていれば、学力が大きく向上することはないと言われています。部活動や学校行事、海外研修、フィールドワークなどに励むことで、学力も伸びていきます。

変革期にある大学入試

大学入試が変わっていきます。
これまでの大学入試の多くは、個別の教科の知識を問うものでした。それがこれからは、知識の暗記だけでは合格が難しくなるのです。象徴的な例は、大学入試センター試験に代わって21年度から導入された大学入学共通テスト(以下、共通テスト)です。導入2年目の共通テストは平均点が大きく下がりました。その要因となったのは数学です。問題文が長文化されたこと難易度が大きく上がったのです。数学的な知識が問われる前に、「なにが問われているのか」を問題文から読み解くことが求められたのです。つまり、読解力と数学の知識の両方が問われることになったのです。

文部科学省は学力の3要素として、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力」「主体的に多様な人々と協働して学ぶ態度」を挙げています。今まで、ともすれば「知識・技能」をきく問題が多かったのですが、共通テストでは「思考力・判断力・表現力」を問う出題が多くなります。
どのような問題が出題されようとも、基礎、基本は変わりません。基礎力をしっかりつけ、その上で、自ら考える問題が出題されます。

私立高は多くのことを生徒に挑戦させることで、大学合格だけでなく、その先の社会で求められる社会人基礎力の育成を行っています。
能力を伸ばすのに最適な高校はどこなのか。公立や私立の枠組みにとらわれることなく、志望校を選んでいきましょう。

(㈱大学通信 情報調査部長 伊沢秀先生)

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