昨年、創立100周年を迎えた越ヶ谷高校は、東部地区を代表する伝統校です。
入試では英語・数学で学校選択問題を採用し、県内でも難関校のひとつに位置づけられています。一方で、同じ越谷市内には越谷北高校があり、大学進学実績や入試難易度だけを見れば、必ずしも地域トップというわけではありません。
では、越ヶ谷高校ならではの進路指導とは何でしょうか。
その答えをよく表しているのが、学校が掲げる「1000日で夢を現実(ホンモノ)にする進路指導」という言葉です。
高校入学から卒業まで約1000日。その時間を使い、学力だけでなく、進路意識や人間的な成長も含めて生徒を育てていくという考え方です。

◆進学重視型単位制で多様な進路に対応
越ヶ谷高校の大きな特色のひとつが「進学重視型単位制」です。
単位制高校には、通常の学年制高校より多くの教員が配置されるため、生徒の希望進路に応じて幅広い選択科目を用意することができます。少人数授業も組みやすく、特に3年次には一人ひとりの受験科目や進路に対応した柔軟な学びが可能になります。
国公立大学を目指す生徒、私立大学を目指す生徒、文系、理系。それぞれに必要な科目は異なります。
3年次には時間割の半数以上を選択科目が占めており、「進学重視型単位制」が単なる制度上の名称ではなく、実際の大学受験に結びつく仕組みとして活用されています。
◆65分授業で「学ぶ時間」と「活動する時間」を両立
もうひとつの特色が、65分授業・週5日制です。
1日の授業は5時間ですが、1コマが65分のため、年間の授業時間は50分授業の学校より多く確保できます。同校では、月曜日から金曜日だけで、50分授業に隔週土曜授業を加えた場合よりも、年間で「14時間半」多く授業できる計算になると説明しています。
つまり、土曜日に授業を入れなくても、十分な学習時間を確保できます。
その分、土曜日を部活動や行事、自主学習に充てることができます。
越ヶ谷高校では部活動加入率が96%を超え、少林寺拳法、ボート、アーチェリー、陸上など全国大会に出場する部もあります。
「勉強だけの進学校」ではなく、行事や部活動にも力を入れながら大学進学を目指す。そのための時間設計が、65分授業にはあります。

◆生徒から見えないところでも続く教員の研鑽
進路指導というと、面談や補習、進路講演など、生徒に直接働きかける取り組みに目が向きます。しかし、その土台には教員側の地道な研究があります。
越ヶ谷高校では、教員研修の中で大学入試問題そのものを分析しています。最近では埼玉大学の二次試験問題を各教科で検討し、どのような力が問われているのか、問題の誘導はどう組み立てられているのか、出題者が何を読み取らせようとしているのかを教員間で共有しました。
そこで改めて確認されたのが「読む力」の重要性です。国語だけではありません。数学や理科でも、問題文を正確に読み、条件を整理し、問われていることを捉える力が必要です。
こうした分析を研修だけで終わらせず、日々の授業にどう戻していくかまで考える。生徒からはなかなか見えませんが、大学入試の変化を教員自身が学び続け、その成果を授業へ還元する地道な取り組みも、「1000日で夢を現実にする進路指導」を支えています。

◆1年次から始まる進路への意識づけ
進路指導は3年生になってから始まるものではありません。
1年生では、大学の先生を招き、「そもそも大学とは何をする場所なのか」というところから考えます。大学は単に「有名だから」「偏差値が高いから」選ぶものではなく、自分が何を学びたいのかを考え、その学問に合った大学を探す場所です。
また、総合的な探究の時間では「2050年の理想の越谷市」をテーマに、生徒が地域の福祉、教育、医療、防災、地域活性化などを研究します。市役所や小中学校への聞き取りも行い、地域社会の課題を自分たちで考えます。
こうした学びも、自分が将来どのような仕事に就き、社会とどう関わっていくかを考える進路教育につながっています。
◆100年の伝統が生む「タテのつながり」
そして、越ヶ谷高校の進路指導を語るうえで欠かせないのが卒業生です。
同校では「卒業生に聞く」「大学生に聞く」「社会人に聞く」といった取り組みを年間6回実施しています。
大学生の先輩からは、受験勉強の方法や大学生活について聞きます。さらに社会人となった卒業生からは、現在の仕事、高校・大学時代の経験、さらには人生の選択についても話を聞きます。
現役大学生だけでなく、幅広い年代の社会人が協力してくれるところに、100年続く伝統校の強さがあります。
越ヶ谷高校には2万6000人を超える卒業生がいます。学校側も、この同窓会ネットワークを今後さらに生かしていきたいと考えています。
伝統とは、単に校舎が古いとか、昔から名前が知られているということではありません。
卒業生が後輩のために学校へ戻り、自分の経験を伝える。その先輩たちが地域や社会のさまざまな場所で活躍し、必要なときに後輩を支える。
それこそが100年の歴史によって積み重ねられた財産です。

◆「国公立何人」だけでは測れない学校の力
もちろん、大学合格実績は重要です。
越ヶ谷高校は「国公立50名」をひとつの目標に掲げています。しかし、進路指導の本当の目的は、その数字だけを増やすことではありません。
近年は総合型選抜や学校推薦型選抜など年内入試が増えていますが、同校では今も一般入試で最後まで挑戦する生徒が多く、一般入試による合格者が約8割、多い年には9割近くを占めます。
一方で、国公立大学だけに進路を限定するのではなく、生徒の希望や通学条件なども考えながら、私立大学を含めた現実的な進路選択を重視する方向へ変化しています。
進路とは、「学校が行かせたい大学」へ進むことではありません。
1000日の高校生活の中で、自分が何を学び、何をしたいのかを考え、その答えに合った道を選ぶことです。
学習、部活動、学校行事、探究活動。そして卒業生との出会い。
そのすべてを材料にしながら、自分の夢を少しずつ具体的な形にしていく。
「1000日で夢を現実(ホンモノ)にする」
この言葉には、100年の歴史を持つ越ヶ谷高校の進路指導の考え方が、よく表れています。

(よみうり進学メディア編集部)
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